いつも心に四次元を

祝! 『 アクロバット』発進

文・宮田珠己

私はジェットコースターが大好きで、好きが高じて本まで書いたほどなんだけど、残念なことにここしばらく乗ってない。どうしても乗りたいと思わせる新しいジェットコースターが登場しないからだ。
しかしこの夏、三重県のナガシマスパーランドに、日本では久しぶりの大型ジェットコースター『アクロバット』が登場する。

スケジュール通りなら、この原稿が読まれる頃には、もうオープンしているだろう。『アクロバット』は面白いぞ。というのも、日本にはこれまでなかったフライングスタイルのコースターなのだ。
シートに座り込んで乗るのではなく、まるでウルトラマンのように空を飛ぶ恰好で乗るのである。

おおお、そんな恰好で乗って大丈夫なのか!大丈夫なのである。すでに世界各地で導入され、中国にも登場している。
正直やっと日本に来たかという印象だ。実はかつて山梨県の富士急ハイランドに『バードメン』という似た形のものがあったのだが、あれは小型でふたり乗りだった。
それに対し『アクロバット』は、大型で最高速度は90キロの本格コースターという点でまったく別物と言っていい。私もアメリカで乗ったことがあり、通常のジェットコースターと比べると、ヒヤヒヤ感は相当なものだった。

とくに最初の上り。乗り込むと、まずシートが後ろにせり上がり、乗客は前向きに倒される。もちろん安全バーで落ちないようにしっかり固定されてはいるが、体の下に何もないから、最初の坂を上る段階から、真下の景色をがっつり眺めさせられることになる。

高所恐怖症の人は目も開けていられないだろう。
まあ、そんな人は乗らないかもしれないけども、いずれにしても日本国内で大型ジェットコースターの登場は久しぶりなので、とてもうれしい。

思えば、今から10年以上前、西暦2000年頃には、日本中でいろいろなジェットコースターが登場して盛りあがっていた。

ナガシマスパーランドに2000年にオープンした『スチールドラゴン2000』というメガ・コースター(超大型ジェットコースター)は、オープン当時4つのギネス記録を塗り替え、続いて富士急ハイランドの『ドドンパ』が世界最速記録を塗り替えて、その頃日本は、世界的に見てもジェットコースター先進国だったのである。
ところがその後、みるみる失速。

不景気が長く続いたことや、TDR、USJの台頭などで、大型のジェットコースターは登場しなくなってしまった。
5年ごとに大型絶叫マシンを投入すると宣言していた富士急ハイランドも、2011年にオープンさせたのは大型とは呼べない中規模なコースター『高飛車』だったのである。
そうして日本のジェットコースターが停滞している間、世界ではギネス記録が次々と塗り替えられ、今では世界最高速のジェットコースターはアラブ首長国連邦のアブダビにある。

そのほか、これまでになかったようなニュータイプのコースターが続々と登場し、今回のフライングスタイル以外にも、シートがむきだしのまま走るフロアレススタイル、レールとは別にシートが回転する四次元スタイル(富士急ハイランドの『ええじゃないか』がこれにあたる)、ほかにも横に10人が並んで座り、レールの横に乗り物が大幅にはみ出して走るダイブマシンと呼ばれるタイプなど、世界はまさに百花繚乱の時代に入っている。
なのに日本にはほとんどが導入されておらず、もはや周回遅れとも言える状況に陥っていると言っていい。

そんななか満を持して登場する『アクロバット』。世界的には遅すぎたと言ってもいいぐらいだが、そうであっても日本で乗れるようになるのは素直にうれしい。
私の見るところ、今世界の潮流はぐるっと一巡して、ふたたび普通のトロッコ型に戻りつつある。
ループもなく、ひたすら大きな山の上り下りを繰り返すだけだが、マニア的視点で見ると、その形が一番楽しい。もちろん超大型化しているから、形は定番でも、これまでとはスケールの違うスリルが味わえる。

そうそう、最後に、新しいジェットコースターは、どれも乗り心地が格段によくなってきていることを、強調しておきたい。
新型ジェットコースターは痛くない。これ重要。テストに出ます。

宮田珠己●1964年、兵庫生まれ。大学卒業後、約10年のサラリーマン生活を経て、作家に。旅エッセイや小説などを執筆。主な著書に『東南アジア四次元日記』『旅の理不尽 アジア悶絶編』『ジェットコースターにもほどがある』『日本全国津々うりゃうりゃ』など多数!!

Collage:younashimanbo!